昨今競馬界ではクラブ法人の馬の活躍が華々しい。三冠馬で2年連続フランスの凱旋門賞2着のオルフェーブル、G16勝のブエナビスタ、今年の3歳馬ハープスター、イスラボニータなど名前を挙げればきりがない。
クラブ法人の馬というのはいわゆる一口馬主で募集された競走馬のことである。一口馬主というのは一頭の馬の権利を複数で出資しして所有する仕組みで、JRAへの馬主登録はクラブ法人が行う。
出資者は自分が出資した競走馬が活躍すればその賞金を分配金として受け取ることが出来る、いわゆる商品ファンド法に基づく金融商品の一種である。 出資者は、自分が出資した競走馬が中央競馬のレースで走ってくれることで、実際に馬主になるのと比べ小額の経済的負担で擬似的にオーナー気分を楽しめることもあり、人気を博している。
著者は10年近くの一口馬主歴があるベテランで、これまでの通算回収率は291%というなかなかの凄腕である。この本の中では、出資前のカタログの取り寄せから競走馬が引退するまでの流れがイメージ出来る内容になっており、ちょっと一口馬主に興味があるという人には数少ない入門書である。更に本書には一口に特化したデータも多数掲載されているので、既に一口馬主をはじめている人も出資馬選びの参考になる。正直僕が社台・サンデーの募集馬の申込をする前にこの本が出版されていたら僕の出資馬も変わっていたかも知れない。
本書は、そのタイトルの通り一口馬主になることの愉しみ方を読者に伝えることを軸において内容が書かれているが、随所に著者が出資馬で素晴らしい回収率を上げている秘訣を紐解くヒントがある。例えば有名馬の カタログ分析の項で何度も書かれているが「血統的背景や兄弟の勝ち上がり率から考えて割安」。こういう視点で馬を探すことが回収率upの秘訣ではないかと感じた。
一口の回収率上位の厩舎ランキンがからも面白いことが読み取れる。クラブ馬の勢力が 大きくなるにつれ厩舎にとってもその活躍は見逃せないものとなっている。ランキング上位の厩舎にリーディング上位のトレーナー達が名を連ねているのはその 証左であるし、若手のトレーナーがその間に食い込んできているのも興味深い。
クラブは色々な厩舎に分散して預けるというよりは、ある程度絞った厩舎に毎年預けるという傾向があるようなので、厩舎としても一度クラブと蜜月関係が出来れば長期的な厩舎のマネジメントもしやすくなるのであろう。そういったことも踏まえて、若手の才覚のあるトレーナーは特にクラブ馬の育成に力を入れているのではないかと思う。
かつての英国の首相チャーチルは「ダービー馬のオーナーになるには、一国の宰相になることよりも難しい」と発言をしたことは有名である。我が国では長引く不況の中で昔ながらの大馬主というのは姿を消してしまった。替わりに一口馬主という形でサラリーマンがダービー馬の馬主の地位を手に出来る扉が開かれたのである。
競馬ファンでも馬主などというのは手の届かぬ夢で鼻から諦めている人いるかも知れないが、一口馬主であれば社会人のこずかい程度からはじめることが出来る。
一頭の馬に寄り添いデビューの前から引退まで追い続ける、そして出資馬の活躍に胸をときめかせる。この点においては一口も個人馬主も何も変わるところはない。わくわく出来ることに投資するこれは僕が最も素晴らしいと考えているお金の使い方である。 馬券を買って楽しむ競馬とはまたひと味違う大人の愉しみとして、一口馬主に興味をもった人は読んでおくべき一冊であろう。
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